2013年四川省日中合同調査報告

 青いケシ研究会と中国科学院昆明植物研究所との合同植物調査は、本調査が四川省南西部涼山地方の螺髻山(ルオジーシャン)と冶勒(ヤレ)自然保護区を対象地域として6月26日から7月9日までの14日間、継続調査が四川省北西部を対象地域として9月10日から9月22日までの13日間をかけて、以下の日程で実施されました。日本側は本調査に12名、継続調査に5名が参加し、中国側ではガイドや運転手、トレッキングスタッフ、アシスタントのほかに、昆明植物研究所から本調査には周卓さん、継続調査には陳永生さんの二人の研究員が参加されました。

 折りからの記録的な豪雨で本調査も継続調査も大幅な日程変更を余儀なくされ、継続調査では青海省入りを断念しましたが、それでも本調査の螺髻山では今回の旅行の主目的である新種と思われる「赤黒いケシ」のほかに、もう一種の新種と思われる青いケシを発見して採集調査し、継続調査では分類の位置づけがよくわからなかった小形の青いケシを調査し、また中国側の研究者やアシスタントによって本調査と継続調査を合わせて300点以上の植物標本を採集し、昆明植物研究所の標本庫に納めることができました。

地図

★本調査日程表

- by car, ---by walk (trekking with horses)

1. 6月26日(水):成田 (17:35発, NH947, 直行便)⇒ 成都 (22:20着), 標高500m, ホテル泊

2. 6月27日(木):成都 -(高速, 6時間)- 西昌(シーチャン), 標高1500m, ホテル泊

3. 6月28日(金):西昌, 昼食後にホテルを出発-(1時間)-バイバイディン村, 標高2600m, テント泊

4. 6月29日(土):バイバイディン村から南に登る ---(3時間)--- 螺髻山Camp 1(アーンズツァウタ), 標高3400m, 午後は周辺を散策, テント泊

5. 6月30日(日):螺髻山Camp 1(アーンズツァウタ)---(3時間)---駱駝峰(ロトフォン), 標高4000m, メコノプシス観察, テント泊

6. 7月1日(月):午前中は駱駝峰でメコノプシス観察, 11時過ぎに出発し, 北に引き返す ---(2時間)--- 螺髻山Camp 2 (干海子, カンハイツ), 標高3800m, テント泊

7. 7月2日(火):螺髻山Camp 3 (干海子) --- (5時間)---バイバイディン村 -(1時間)- 西昌, ホテル泊

8. 7月3日(水):西昌, 昼食後出発 -(高速, 3時間)- 石棉(シーミェン), 標高850m, ホテル泊

9. 7月4日(木):石棉-(1時間)- 栗子坪(リーツーピン), 標高1750m -(1.5時間)- ラマゲトウ村, 標高2650m -(30分)- 冶勒Camp 1 (山麓), 標高3000m, テント泊

10. 7月5日(金):悪天候のため, 冶勒Camp 1 に停滞, 午後に付近を探索, テント泊

11. 7月6日(土):冶勒Camp 1から水海子(シュイハイツ) 方面へ1日で往復, テント泊

12. 7月7日(日):午前中は冶勒Camp 1付近を探索し, 午後に出発 ---(30分)--- ラマゲトウ村 -(1時間)- 栗子坪 -(1時間)- 石棉, ホテル泊

13. 7月8日(月):石棉 -(高速, 5時間)- 成都, ホテル泊

14. 7月9日(火):成都(09:05発, NH948, 直行便)⇒ 成田 (15:25着)

 

★継続調査日程表

(4WD車で移動し、ホテルに宿泊)

1.7月10日(水):成都-都江堰、豪雨被害のため、停滞

2.7月11日(木):都江堰公園を観光

3.7月12日(金):都江堰-石棉-濾定-康定

4.7月13日(土):康定-折多山-新都橋-八美-丹巴

5.7月14日(日):丹巴-小金-日隆-巴朗山-日隆

6.7月15日(月):日隆-小金-夢筆山-馬児康

7.7月16日(火):馬児康-羊拱山-馬児康

8.7月17日(水):馬児康-夢筆山-小金-日隆-巴朗山-日隆

9.7月18日(木):日隆-夾金山-小金

10.7月19日(金):小金-丹巴-八美-新都橋-折多山-康定

11.7月20日(土):康定-濾定-石棉-成都

12.7月21日(日):成都

13.7月22日(月):成都⇒成田

 

 今回の調査で観察した青いケシ(メコノプシス属植物)は全部で10種、そのうち螺髻山で採集調査した2種は新種と思われ、赤黒い花を咲かせるものにはアトロヴィノサ M. atrovinosa、青くて鐘形の花をつけたものにはルオジエンシス M. luojiensis という仮の種名がつけられました。アトロヴィノサは暗いワインカラーを意味し、ルオジエンシスは山の名前に由来します。アトロヴィノサは第2回青いケシ研究会(2012年9月25日)で千葉盈子さんが報告した「謎の植物」です。

 冶勒自然保護区では2007年に100年ぶりに再発見されたウィルソニーの基準亜種 M. wilsonii subsp. wilsonii がベースキャンプ付近で観察されました。このベースキャンプ付近では、珍しい種で黄色い花を咲かせるメコノプシス・ケリドニー M. chelidonii も観察されました。この種はメコノプシスとしては特殊な根茎や葉をもつため、近縁種のヴィローサやスミシアナとともにメコノプシス属からカトカルティア属 Cathcartia に移すのが妥当と思われます。この保護区の高山帯に生え、2010年に新種として発表されたヘテランドラ M. heterandra とプルケラ M. pulchela の2種については、豪雨のためにベースキャンプでの停滞を余儀なくされたため、観察するのをあきらめていたのですが、健脚の一名(松永秀和さん)が高山帯まで一日で往復し、ヘテランドラの撮影に成功しました。

 継続調査コースの巴朗山(バーランシャン)と夾金山(ジアジンシャン)では、2011年に新種として発表された青いケシのバランゲンシス M. balangensis とその変種で暗紅色の花をつけるアトラータ var. atrata が観察されました。これらの山にはもう一種の小形の青いケシがあり、これまで分類上の位置づけがはっきりしなかったのですが、今回の調査で甘粛省に生えるレピダ M. lepida に近い種類であることが判明しました。継続調査ではこの植物とよく似たバルビセタ M. barbiseta やヘンリキ M. henrici も観察することができました。

 本調査と継続調査で観察された主な植物は、以下の通りです。サムネイル画像をクリックしてご覧ください。

 

★本調査で観察された主な植物

★継続調査で観察された主な植物

第7回青いケシ研究会での報告も参照してください。

★本調査と継続調査で観察された植物のリストを以下でダウンロードできます。

2013年四川省 調査旅行観察植物リスト.pdf
PDFファイル 113.9 KB